2009年12月29日火曜日

Hiromi Uehara/ December 27 at Bluenote Tokyo


昨年の秋にサンフランシスコのYOSHI'Sでピアノトリオを見て以来だから、かれこれ1年ぶりだ。アメリカでもその存在感の大きさに実際触れてみて驚いたのだが、今回のソロピアノはそれ以上のパフォーマンスだった。まさにノックアウトされた感じ!
軽いタッチで始まった1曲目はおなじみジョージ・ガーシュインの「I got rhythm」だったが、その変幻自在なリズム、グルーブ、原曲のイメージを損なうことなく、しかしそこにはHiromi Ueharaの音世界が出現していた。その感じを言葉で伝えることは本当に難しいのだが、彼女がいざ演奏し始めると、その世界に観客ひとりひとりが吸い込まれてゆく、そんな感じのライブである。
もとより超絶的なテクニックを誇るプレイヤーではあるが、そんなことをみじんも感じさせない圧倒的な魅力をもったミュージシャンを我々の国が生み出したことを誇らしくさえ感じた。
まさに「21世紀のジャズピアニスト」と呼ぶに相応しいポジションを彼女は確立してしまったのではないか。今年のライブを締めくくるに相応しいクオリティのソロピアノ・ライブであった。3回にもわたるアンコールにも応えてくれた約2時間の体力にも驚愕してしまった。
ひろみ、グレイト!!

2009年12月17日木曜日

Dionne Warwick/ December 16 at Bluenote Tokyo


今年もとうとうあと2週間。なんといっても今年は女性ヴォーカルの当たり年だった。
8月のマリーナ・ショー、そして、このディオンヌ・ワーウィック。個性は違ってもともに
大御所。期待以上の素晴らしいパフォーマンスを堪能させてくれた。
彼女は思ったより大柄で、その身体と同じくらい大きな声量を聞かせてくれる。
バート・バカラックの名曲を数多く世に送り出したことでも知られているが、レコードでは
どちらかというと雲の上でささやくように歌うスタイルに聞こえるが、実は凄い声量に支えられていることがライブをみてよくわかる。とにかく声が大きいのだ。
息子であるヴォーカリスト、デイビッド・エリオット(彼も素晴らしかった)の前座の後、「Walk On By」でライブは幕を開けた。
バカラックの曲ばかりではなく、1980年代にも「Heartbreaker」「I 'll never love this way again」などのヒット曲もちりばめられたステージは、まさにニューヨークのブルーノートにいるような気分にさせてくれる。
昨年、発売したというクリスマス・アルバムから「I'll be home for Christmas」「Christmas Song」も披露してくれたが、エンディングはエルトン・ジョン、スティービー・ワンダーなどと歌った「That's What Friends Are For」で締め括られた。とにかくヒット曲の多いビッグアーティストだということを納得させられた夜だった。

2009年11月2日月曜日

THIS IS IT - Michael Jackson/ November 1 at MOVIX


Michael, You were the one and only!
「This Is It」、まさにこれが最後のパフォーマンスとなってしまったマイケルの一瞬の輝き。幻のロンドン公演のために用意されたステージパフォーマンスがこんなにも緻密で素晴らしいものだったなんて。神様は何といたずら好きなのだろうか。
それにしてもよくここまで記録を残していてくれたものだ。もともと彼の個人的な記録として撮られていたということだが、まるでこの映画のために撮影された映像と言っても過言ではない。ディズニーの「ハイスクールミュージカル」などの監督であり、今度の公演ではマイケルの共同クリエイターでもあったケニー・オルテガが実に巧みに編集しており、まるで2時間のリハーサルライブを体験したような気にさせる。ダンサー、バンドメンバーの質の高さはさすがマイケルのライブ。ひとりひとりがマイケルを尊敬しきっている感じが、とてもストレートに伝わってきてそれもジンとくる。
3D版の「新スリラー」だけでなく、ライブのためにさまざまに用意された映像を駆使したステージングは、リハーサルのみで終わらせるのが実に惜しい出来映え。アメリカのエンターテイメント業界の実力、層の厚さに新たに感動した。マイケルが3月の記者会見で言った「みんなが聞きたい曲をやる」という言葉どおりに、ヒット曲が満載。ジャクソン5の「帰ってほしいの I want you back」まで飛び出すサービス精神に脱帽した。最後までミュージック&ダンスマンだったのだ。合掌。

2009年10月27日火曜日

SET本公演「ステルスボーイ」/ October 26 at Tokyo Art Theater


1980年代のいつ頃だったろうか。YMOの「サーヴィス」というアルバムでギャグを披露していたのが若き日のSETの面々だった。その頃からちょっとアバンギャルドなギャグを繰り出すユニークな集団ではあったが、それに加えてクレイジーキャッツ、ドリフターズなどを彷彿とさせる音楽ギャグのセンス、そのレベルの高さには特筆すべきものがあった。そのへんがやはり東京出身の喜劇人。大阪の芸人にはみられない都会的なスタイルをその頃から身につけていたと思う。
その後、日本テレビの「いい加減にします」という伝説のコント番組にて最後の喜劇人、伊東四朗との競演を果たす。その出会いが現在の伊東四朗一座、熱海五郎一座という舞台公演へとつながっているのだ。
さて、そんなSETも今年で創立30周年を迎えた。それを記念する本公演がこの「ステルスボーイ」。結成当初から座付作者として活躍してきた大沢直行の原案をもとに若手演出家として注目されている野坂実が脚色した。二年前の本公演「昭和クエスト」から始まった教育再生三部作のフィナーレに相応しい内容だ。いかにも大沢らしい着眼点から始まり、最後はベーリング海へと物語は進行してゆく。もちろん、SETのこと、ミュージカルアクションコメディという名に相応しい演出は忘れない。最後には座長生活30周年を迎える三宅さんの独壇場を迎えるのだが、これは見てのお楽しみにとっておこう。劇団の看板役者、おぐちゃんこと小倉さんも相変わらず若々しい。まだまだ頑張ってほしいものだ。

2009年9月13日日曜日

Michel Camilo & Tomatito/ September 7 at Billboard Live Tokyo


ラテンジャズ界の大物、ミシェルカミーロとフラメンコギタリストであるトマティートのデュオライブ。アコースティックピアノとガットギターというシンプルな楽器構成であることを忘れさせるほど情熱的かつ音圧、音量ともに圧倒されるパフォーマンスであった。ラテンの名曲「ベサメムーチョ」やデュオにぴったりのチック・コリア作「スペイン」「ラコスタ」など、1曲1曲が聞き所もいっぱい。ベースやドラムスがない分、彼らのグルーブが直接伝わってくるのだが、とにかくそのリズム感覚の素晴らしさには脱帽だ。特にカミーロの超絶的なテクニックには感動した。ラテンの血なのだろうか。黒人のリズム&ブルースのノリとは違った感覚のリズムを感じる。サンバやカリプソ、レゲなど、ラテンの心地よいノリに酔いしれた70分であった。

2009年8月16日日曜日

ZED - CIRQUE DU SOLEIL/ August 16 at Tokyo Disney Resort


昨年10月のスタート時から一度は観たいと思っていたシルク・ドゥ・ソレイユの「ZED」。シルクには常設の劇場でしか上演しない固定プログラムと各国の都市を巡演するツアープログラムの二種類があり、この「ZED」は日本で初めての常設プログラムである。日本では今年もツアーの「コルテオ」が上演されており、日本の観客にももはやおなじみのシルクだが、彼らは世界中で同様の上演を数多く行っており、4000人を超えるスタッフを擁する世界的規模のエンタテイメント集団となっている。
さて、「ZED」である。ラスベガスで観た二つの公演も素晴らしかったが、この公演の完成度はそれ以上と言えるかもしれない。人間業とは思えないパフォーマンスの数々、常設劇場ならではの舞台や装置の素晴らしさ、照明や音楽の一体感、どれをとっても世界レベルのパフォーミングアートである。一度では味わい尽くせない贅沢さだ。もう一度、今度は冬に楽しみたいものである。

2009年8月2日日曜日

Marlena Shaw with super friends/ August 1 at Billboard Live


1975年の名盤「Who is this bitch, anyway?」を一体何回聞いたことだろう。ひとつのすきもない完璧なアレンジ、1曲も無駄のない構成、そして当時の名うてのスタジオミュージシャンによる名演の数々、さまざまな聞き方ができるアルバムだった。開場してからもう2年もたつというビルボードライブ(東京)での二周年記念ライブが、何とこのアルバムの再現だという。
そう、1974年12月にLAで行われたレコーディングに集ったメンバー、ハーヴィー・メイソン、デビッド・T・ウォーカー、チャック・レイニー(今回はメープルのプレシジョンベース)、そしてラリー・ナッシュというスーパーバンドと共にマリーナが登場するだけで会場は興奮に包まれた(これでラリーカールトンが揃えば完璧だったが。。。)。オープニングは「You been away too long」だった。イントロが始まると聴衆全員が曲を認識していた。実にテンションの高いライブである。
マリーナの太く深い声も素晴らしかったが、4人のリズムコンビネーションの巧みさといったら、ちょっと表現できない。ちょうど名人の域に達した落語家の噺に引き込まれている感じといったらいいだろうか。
アルバムの全曲(ストリングスのみによる「A Prelude for Rose Marie」以外)を演奏してくれたが、ライブならではの掛け合いや「Street Walking Woman」の有名なバーでの会話をハーヴィーとマリーナが再現するなど、バラエティ溢れる内容だった。宣言しよう。まちがいなく今年で一番のライブステージ!
ああ。もう一度聴きたい!!

2009年5月25日月曜日

伊東四朗一座・熱海五郎一座合同公演/ May 24 at Aoyama Theatre


これで4回目となるはずの伊東四朗一座、ますます油がのってきた。今年は熱海五郎(三宅裕司)一座とのジョイント公演である。日本の誇るコメディエンヌ、中村メイコ、そして、ご存知小林幸子まで参加するという豪華版である。今回の舞台は、黄金時代を迎えていた日本の映画産業界。事実としても存在した「五社協定」をめぐるドタバタコメディに仕上げている。劇中劇ならぬ、劇中映画(!?)もストーリーにうまくからめてあり、当時の雰囲気を上手に再現していた。さすがにこれだけのキャストが揃うと、俳優それぞれの見せ場をつくるのも一苦労するであろうが、そこは長年伊東や三宅たちとコンビを組んできた妹尾氏がきっちり踏まえていて流石。ベテランの味である。
今回はコント赤信号の3人コントが久しぶりに見られたり、メイコさんの「田舎のバス」を生で聞けただけでも舞台を見た価値があった。劇場に向かう途中車の渋滞に巻き込まれて、例の「5分前」が見られらなかったことだけが残念だった。今年は何だったんだろう?

2009年4月20日月曜日

fourplay/ April 19 at Bluenote Tokyo



ボブ・ジェームス、ラリー・カールトン、ハービー・メイスン&ネイサン・イーストというスーパーバンド、フォープレイも、はや結成から19年。当初のギタリストはリー・リトナーであったが1998年からカールトンに交代。それぞれが70年代から著名なミュージシャンであり、リーダーアルバムも多い。とにかく、空きのないプレイの完成度は素晴らしい。ソロをまわすタイミングやコーラスリフの跳ねる感じは、このバンドならではのものだろう。
今回の来日では、最新作『エナジー』の曲を中心に演奏。アンコールでは、懐かし!!ボブの「ウェストチェスターレイディ」が。イントロが始まったとたんに会場は大興奮であった。

2009年3月21日土曜日

Tatsuro Yamashita/ March 21 at Omiya Sonic Hall


 1973年9月21日、文京公会堂(その後建て直され、高層の文京シビックセンターというビルの中に入りシビックホールという名前になる)。初めてタツローさんのライブ姿(そのときは大瀧詠一バンドのコーラスだった)を見たのは、はっぴいえんどのラストコンサート「Last Time Around」のステージだった。今から36年も前の話。その後シュガーベイブを経て、彼のソロパフォーマンスを何度も見てきた。
 今回は6年ぶりのパフォーマンス。久々の本格的な全国公演で、昨年末から5月まで全50回に及ぶという。ライブでの音楽性にもとことんこだわるタツローらしく、今回のステージ選曲や舞台装置など、練りに練った構成で楽しめる。新しく加わったドラマーとセカンドキーボードも実力者で、バンドに自然に溶け込んでいた。ごきげんなリズムセクションで、自由自在なグルーヴ感が素晴らしい。聴き応え、ノリ応えのあるバンドといえよう。
 彼のライブのもうひとつの魅力といえば落語にも通じるようなトークだが、さすがにこのごろは、綾小路きみまろではないが(!?)年齢の話題もネタにしている(笑)。ただ、彼やユーミンといった同世代のミュージシャンが今も頑張ってライブの現役でいること。そして、そのライブを我々も同時に体験できるとは何と幸せなことだろう。アカペラを含む3時間を超えるエネルギッシュなステージは、円熟味とプロフェッショナリズムに裏打ちされている。でも最後のDowntownにはいつも涙が出てしまう。昔のように、今度はライブハウスで聞きたいものだ。

2009年3月5日木曜日

JAZZ 6 PIANOS/ March 5 at Tokyo Metropolitan Art Space


ジャズピアニスト6人によるライブ。提唱したのは村上ポンタともグループを組んでいる佐山雅広。佐山の呼びかけで大御所、山下洋輔、アレンジャーとしても著名な島健、最近充実した活躍をみせる貴公子、塩谷哲。ユニークな活動を続ける小原孝、そして紅一点、国府弘子というぜいたくな顔ぶれが揃った。2005年に始まったこのライブ、年を追うごとにプログラムも充実してきているらしく、今年のシリーズは昨年から今年にかけて12公演も組まれているとのことだ。
まず6台のピアノの音の厚みに圧倒される。6人それぞれのピアノスタイルも楽しい。何を弾いても山下らしいプレイ。オルケスタデラルスで10年間プレイしていた塩谷も多彩な技をみせる。二部構成のステージで、2時間半のステージは聴応えも見応えもたっぷりだ。国府のアレンジによる「TAKE FIVE」、塩谷編曲の「ボレロ」そして、ラストの「ラプソディ・イン・ブルー」(佐山アレンジ)はアレンジャーの個性も豊かに楽しませてくれた。圧巻は「ラプソディ〜」。佐山は時折指揮もまぜながら、この大作を6台のピアノの特質を引き出しながら実に上手に料理していた。極上のフレンチを味わった気分!ブラボー!!

2009年2月20日金曜日

夜の来訪者/ February 20 at Kinokuniya Theatre


日本でも長い間上演されているサスペンス劇の傑作。思い出してみれば高校の演劇鑑賞で見た芝居ではないか。今となっては記録もないので俳優座の公演だったと思うのだが、俳優の名前もほとんど覚えていない。が、強烈な印象が残った名舞台だった。
さて、2009年度版は、司会などもこなす名優、段田安則の演出によるもの。芝居のプロットがよくできているので、あまり過剰な演出はなくとも十分に見応えがあるのだが、その辺はさらりとした印象だ。中でも存在感を示していたのは、父親役の高橋克実(どうもボキャブラ天国のボケキャラが浮かんでしまうのだが)と長女役の坂井真紀。テレビで見るよりも魅力的な役者たちだった。それに反して、どんな役も絶妙にこなす八嶋智人は今回ちょっと空回りかな、という印象だった。原作はイギリスの話なのだが、まるで日本のオリジナルのように聞こえるのは不思議だ。
とにかく、今見ても古さをいっさい感じさせない第一級の舞台劇といえるだろう。

2009年2月1日日曜日

Christian Scott/ January 31 at Bluenote Tokyo


日本初のライブとなったクリスチャン・スコット。モードジャズ風なイントロで曲が始まった。最初はなかなかその個性が見えにくかったが、曲が進むうちに若い頃のウィントン・マルサリスを彷彿とさせるようなフレージングをかいま見せる。ニューオーリンズ出身の若き才能という触れ込みもなるほどかな。バックを支えるミュージシャンも達者ぞろい。リズムセクションのベース、クリストファー・ファンとドラムス、ジャマイア・ウィリアムスは特に素晴らしかった。曲はほとんどオリジナルだったので、アンコールの「ブルーモンク」はホッとしたと同時に、バンドの真の実力が発揮されたナンバーだった。今後が楽しみだ。

2009年1月27日火曜日

TAKE 6/ January 25 at Billboard Live


昨年の4月以来の来日。新作『The Standard』を発表したテイク6が、初めてのビルボードライブへの登場である。このところ来日メンバーとしてほぼ固定した観のあるクリスチャン・デントリーは、完全にグループにとけ込んできた。
おなじみのナンバー、「So Much To Say」「Spread Love」などに加えて、新作のCDからは「Seven Steps to Heaven」、ミシェルルグランの名作「風のささやき」そして「What's Goin' On」などを初めて披露してくれた。なかでも「Seven〜」のところで、マイルスデイビスのトランペットソロをヴォーカリーズ先駆者のジョン・ヘンドリックスとアル・ジャロウに歌ってもらったことをマーク・キブルが話してくれた。その後、そのヴォーカーリーズ・ソロをマークが見事に再現した。彼らの実力、恐るべし。

2009年1月2日金曜日

Pat Metheny Group/ December 31 - January 1 at Bluenote Tokyo




今年最後のブルーノートは、パットメセニーグループによる「カウントダウン・ライブ」。おしゃれな年越しとなりました。今回のメンバーは、長年のパートナーであるキーボードのライル・メイズに、ステディなベースで定評のあるスティーブ・ロドビー、そしてラテン系のドラミングをみせるアントニオ・サンチェス。公演によりメンバーが入れ替わるのはよくあるのだが、パットのこのユニットはその意味でもJazzっぽいと言えよう。
カウントダウンの公演ということもあり、客席は立ち見もでるほどの満員状態。「Have You Heard?」のオープニングから、もう全員興奮状態。あいかわらずクリアなギターサウンド。めくるめくフィンガリング。パットメセニーの世界を満喫させてくれる。
お待ちかねの年明けの時間が近づくと、パットのMCが始まった。「この曲を私たちの新しい大統領、バラク・オバマに捧げます」と言って、「Are You Going With Me?」がスタート。0時が近づくと、ステージの壁に分数、そして秒数が表示され、曲のエンディングとほぼ同時に「A Happy New Year!」。事前に全員に配布されていたクラッカーがそこら中で炸裂! 最高な年明け気分を演出してくれた。