2013年10月28日月曜日

ロスト・イン・ヨンカーズ/October 26 at Parco Theatre

アメリカの劇作家ニール・サイモン作の名作を三谷幸喜が初演出。 もともとサイモンを心の師とあおぐ三谷が意欲的にとりくんだとあって 配役陣も豪華であった(彼が昔作っていた劇団、東京サンシャインボーイズは、 サイモンの名作「サンシャインボーイズ」がネタになっている)。なかでも、 ヴェラ役の中谷美紀、一家の長である 老婆ミセス・カーニッツ役の草笛光子の素晴らしさは特筆すべきものだった。 この二人の演技を見に行くだけでも価値がある。 舞台はニューヨーク州のヨンカーズに暮らすユダヤ人一家の話だが、サイモン 自身、ユダヤ系アメリカ人であること。もともとがニューヨーク育ちであることから 自伝的な要素も感じれられる内容。 舞台は休憩をはさんで一部、二部という構成だったが、3時間を超える力作にもかかわらず 見るものをぐいぐいを引き込んでいく魅力にあふれた舞台だった。特に二部で展開する 家族の複雑な事情が少しずつ明らかになりエンディングへの感動に導く構成は見事という他は ない。骨のある、それでいて家族のあたたかみが感じられる秀逸な舞台であった。

2013年10月21日月曜日

東京ヴォードビルショー「その場しのぎの男たち」/ Oct 20 at Honda Theater

結成40周年記念公演とのことである。1990年代にヴォードヴィルショーのために書かれた三谷幸喜作の一幕ものだが、明治時代に本当にあったロシア皇太子暗殺未遂事件を題材に、当時の政治家たちのだめさ加減をユーモラスに描いている。伏線がいろいろはりめぐらされているのだが、そこは見てのお楽しみ。 初演時から客演している伊藤博文役が伊東四朗、御大である。歴史的にも悪名高い伊藤をじつに愉快に演じている。その存在感は三宅裕司とコントをやるときとはまるで違う人物に見える。多分、この存在感を佐藤B作たちが期待しているのだろう。 松方総理役の佐渡稔、逓信大臣役の石井愃一の二人は懐かしい「見ごろ食べごろ笑い頃」のテレビでよく見かけた顔だ。また市川勇は数年前に伊東四朗と小松政夫の舞台「追いつ追われつ」での客演で。みんなどこかで出会っている人たちだった。2時間ピッタリの上演時間だったが、三谷らしい脱線フィクションもお楽しみ。山本ふじこが実に愉快に演じていた。次回も三谷作の新作だという。2015年の春が今から楽しみだ。

2013年10月16日水曜日

Steely Dan Mood Swings Tour 2013/ October 7 at Beacon Theatre in New York

2011年のShuffle Diplomacy 2011 tourに続く全米ツアー。最後に地元であるニューヨークの ビーコンシアターで7日間の公演がセットされ、日ごとにテーマ性をもたせたライブが 企画された。私が見たのはラス前の7日、テーマは「Aja plus Selected Hits」。この 他のテーマには、Greatest Hits Night , Audience Request Night, Gaucho plus Selected Hits など、どれも聞きたい内容だった。 さて、この日のセットリスト、あのエイジャが頭から再現されたのだ!  レコードの曲がその曲順どおりすべて演奏された。もちろんオープニングは「Black Cow」。 もともと地元ニューヨークを舞台にした歌だけに、劇場中が一緒にユニゾン。 震えるような感動だ。やっぱりSDはニューヨークで聴きたかった。 観客の中にちらほら日本のファンもいて、廊下であった方はなんと地元在中のビジネスマンだったが このビーコン・シアターには日参しているという。やはりSDには魔力的な魅力があるのだ。そういう自分も わざわざ日本から来ているのだから、同じことか。 このビーコン・シアターはDonald Fagenが主宰した、あの名盤「New York Rock and Soul Review」が開かれた同じ場所。 それだけに感慨もひとしおだったが、この劇場、1920年代からの由緒あるところらしく、ギリシア彫刻風のインテリア が施された内装も素晴らしかった。今は、マディソンスクエアガーデンのグループが運営しているらしい。 前座では3人組のDeep Blue Organ Trioというゴキゲンなバンドも登場したが、SDの演奏が始まったのは ほぼ21時前。それから11時10分過ぎまでは休憩なしでたっぷりとライブを堪能させてもらった。 2011年もそうだが、最後には「My Old School」や「Reelin' in the years」をノリノリで聴かせるパターン。 アンコールもそのままの状態で「Kid Charmaigne」。バックの強者たちの安定感も相変わらずで、何度見ても キースのドラミングは素晴らしい。また、日本にも来てほしいものだ。

2013年10月14日月曜日

New York Philharmonic-Beethoven Symphony No.9 / October 4 in Avery Fisher Hall at Lincoln Center, New York

初めてのリンカーンセンター。クラシックの箱となっているのがこのAvery Fisher Hall。この他にメトロポリタンオペラハウスとジャズなどのホール、それに演劇のホールなどがあり、まさにニューヨークの芸術の殿堂となっている。 さて、ニューヨークフィルの今夜の出し物は、ベートーベンの第九。音楽監督を務めるアラン・ギルバートの指揮によるもので、合唱にはマンハッタン・スクール・オブ・ミュージックの学生たち(と思われる)、そして4人のソロイストもプロフェッショナルが揃っていた。はじめは現代音楽の曲を演奏したのだが、とにかくオーケストラの音の大きさ、音圧に圧倒された。これが本場のオーケストラの迫力なのか。最後の第4楽章の迫力たるや、クラシックのイメージがひっくり返されるほどの音圧と音量に体が震えた。 第九そのものが構成もゴージャスだが、それ以上にオーケストラの音が変幻自在。アメリカの一流オーケストラの実力というのは、確かにすばらしかった。今度はウィーンフィルの生音を聞いてみたい。