2010年1月11日月曜日

Michael Franks/ January 10 of 2010 at Billboard Live Tokyo


トミー・リピューマ制作、ニック・デカロ編曲の「The Art of Tea」が1975年。同じくリピューマ制作、クラウス・オガーマン編曲の「Sleeping Gypsy」が1977年。30年経った今でもAORの名盤として親しまれているこのアルバムの曲に絞ったライブが実現した。昨年の夏に同じビルボードで企画されたマリーナ・ショーの「Who is this bitch, anyway」記念ライブと同じ趣向ではあるが、昔からのファンにとってはそれだけで心が動かされてしまう。この時代の歌はなんとこんなにも心地よいのだろうか?
さて、昔から何百回と聞いてきたマイケルを見るのは今回が初めてだったが、アルバムのイメージそのまま、飾り気のない人柄がにじみ出ていた。訥々と曲を紹介するコメントも控えめで、曲そのものを聞いてほしいというタイプのアーティストなのだろう。「Down in Brazil」は彼がブラジルに旅行しながら作った曲であることや、「B'wana He No Home」はリチャード・カーペンターがカヴァーしてくれて嬉しかったとか、初めて聞く情報もさりげなくはさんでくれてファンとして興味深かった。
30年もの時を経ると、同じ曲でも歌い方が変わったり解釈が異なってくることもあろうが、マイケルの歌声はあのアルバムのまま。アンニュイなヴォーカルスタイル(ジャズヴォーカルでいえば、チェット・ベイカーか)は健在で、大学教授然とした風貌(事実、昔オレゴン大学で教鞭をとっていたという)は昔のまま。ギターレスのバックバンドもそれぞれが達者なプレイぶりで、ライブとしては極上の部類といえよう。今年のライブ鑑賞も上々の出だしのようである。